No10. 貴方の為になる「預言者」などいない
      
                        99. 6. 9  藤島公平

 よく「今からは○○の時代だ」と預言者風に「提言」される方がいる。バブルの時代、一億総不動産屋か、株屋か、といわれた時代には「今、株や土地に投資する時代だ」、と説き、バブルが崩壊すると「バブルに躍らされたバカがいる。今は堅実に経営をする時代だ」、と同じ人間が説く。「今は、顧客対応コストを極力減らしたディスカウントの時代だ」と説いたかと思うと「今からは顧客ニーズを大切にした経営の時代だ」と説き始める。
 しかし「今は、ディスカウントの時代だ」と説かれてディスカウントの事業を始めた者に、「今からは顧客ニーズを大切にした経営の時代だ」と急に説かれても、簡単に路線転換はできない。まさに「評論家」の、経済情勢に機敏に便乗した無責任な言動に振り回されているといってよい状況がある。

 これらはある意味での「あおり」行為と私はみている。「あおり」に乗った人が多ければ多い程、「あおり」による経済効果をある特定の人にもたらす。

 今マメリカでインターネットを利用した素人投機家が急増しているそうだ。仕事もやめ一獲千金を夢見て全財産を投入しているという。その時も「今やインターネットによって秒単位の取引で普通のサラリーマンでは稼げない金を稼ぎ出せる」「今や個人ディーラーの時代だ」と説く人がいる。それらの扇動家の中には、ネット上で情報を操作して大量の個人ディーラーを動員して株価操作している者もいる。  
 個人ディーラーが多く参入すれば、一時的に株式市場は活況になるだろう。しかし、それもある種のバブルで、一時期誰でも儲かっているような錯覚をもつ。しかし、最終的には現実経済の影響を受け、バブルは必ず崩壊する。その時、過去に儲かった分以上の損をかぶる。ところが「俺は崩壊まぎわに、墜落する飛行機からパラシュートで脱出できる」と信じきっている人がいる。これこそ「お人好し的楽天家」である。墜落するときに一番に逃げ出すのはまさに煽ってきた者たちで、その時皆に「一緒に逃げましょう」とは絶対に言ってはくれない。

 私は「今からは○○の時代」と説く評論家を信じない。
 例えば商品によっては、顧客ニーズに密着することで顧客を獲得でき、売上を伸ばせるものもある。逆にスーパー、コンビニ方式で、対面販売コストを下げて販売した方が利益率の高いものもある。ショッピングセンター方式で、色々な業種がモールを組んだ方が相乗効果を出す場合もあれば、逆に単独店舗方式の方がよい業種もある。従って自分の経営している、又は経営したい事業の種類、対象顧客、取り扱う商品の種類などによって独自の方式を選ぶべきであって、「今からは○○の時代」に簡単に乗せらないことだと思う。

 例えば、化粧品、薬などは顧客と対面販売が必要な業種と思う。確かに化粧品、薬はどこで買っても同じ物である。しかし利用者によっては同じ効果をあらわさない。同じものでも、ある人にとっては肌荒れの原因になることもある。薬も飲み合わせや体質的に合わない場合がある。このような商品は棚に並べておいてセルフ販売すればよいというものでもない。確かにスーパーで化粧品を買う人もいるだろうが、女性にとって肌の問題は繊細で重要なことだ。
 またカウンセリングを求めている人も多い。女性は女性同士語り合える場も求めていることもある。持病をもっている人は、自分のことを親身になって聞いてくれる薬局を求めている。デパートの化粧品売り場や病院ではそんな自由な時間はとれない。だから地域に根付いた個店の存在がいまでも必要だと思っている。
 ところが酒や米の場合はどうだろうか。酒は同じ物はどこで買っても同じである。米も銘柄の信憑性を除けば又同じである。したがって「この店で買わなければ」という動機付けが乏しい。これらの業種は過去、免許制という環境で保護されていた。その環境がなくなるとあっという間に潰れる店が続出した。いち早くコンビニ化したところが頑張っているといったところだ。これらの商品は、消費者にとっては生産者に対する信頼が中心で、販売者の信用は商品には付加されにくい。それであれば、別のサービスを付加する努力をするか、対面販売コストを下げるコンビニ化の方向しかないことになる。
 また時代の流れとしてマルチメディアが発展することは確実だろう。だからといって、全ての業種がマルチメディア関連となるわけではない。逆にマルチメディアとは縁遠い分野の存在もまた必要であり、マルチメディア化が進めば進むほど、見直されることも予想される。

 つまり時代の流れは全体としては一定の方向に向かっていくことは予想されても、貴方の事業が、その流れのなかで、どの位置を占めるかの問題こそ大切で、そこを考え事業展開することが時代を自分流に読むことなのではないだろうか。

 「自分はなぜ、何を、誰に、どのように、売りたいのか(買ってもらいたいのか)」の基本がまず明確になることだろう。その中から立地や投資の規模、商品構成、サービスの程度などが割り出されてくる。
 しかし既にある立地で、ある特定の商品を売っている人にとっては、簡単に立地や業種を変えられない。しかしその場合でも、その現状の中で改善の方向を探すとなれば、やはり「自分はなぜ、何を、誰に、どのように、売りたいのか(買ってもらいたいのか)」の原点に立ち返って現状を見直すことが原則である。
 いずれにしても「今からは○○の時代だ」に乗せられるのではなく、今からの時代の方向を自分なりに読み、その中で自分はどのような位置をしめ、どう生きたいのかを考えることの方が、結局はよい結果を生むと思う。

                      99. 6. 9



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