No35.会計原則に反した大銀行の自己資本を認める監督庁


                             2002. 4.15  藤島公平

 ペイオフを前後して金融機関の安全性が問題視されている。その安全性の指標として自己資本比率の大きさに関心があるからである。

 地方の信用金庫、信用組合では金融監督庁の検査によって、従来健全又は注意先融資とされていたものについて、半ば強制的に要注意債権とか破綻懸念先債権に分類されたために、それ見合う引当金を積み増した結果、自己資本が減少し、果てには負債超過ということになり、金融監督庁により営業停止の憂き目をみた機関もあるという。
 関係者によると「金融監督庁は、はじめから当行をつぶす目的で来たとしかいえないような態度だった」とももらしている。「そして事前に引受銀行まで準備されていて、当行を破綻させたあとのシナリオまで出来上がったうえで検査に入ったふしがある」とまで述べている。
 公平な検査をすべき金融監督庁がそこまでするのか、と疑問があったが、地方銀行に対する態度と都市銀行に対する態度の違いをみて疑問は益々高まってきた。

 それが都市銀行についての自己資本比率の「甘さ」である。
 自己資本が正味の自己資本であるのか、それとも「かりそめの」自己資本なのかの問題が浮上してきている。
 その一つが公的資金による資本注入の部分の取り扱い、そしてもう一つは税効果会計という手法による自己資本の増加部分である。

 公的資本による資本注入部分は確かに資本を構成する部分ではあるが、将来は国庫に返還すべき資金である。通常の資本とは意味が異なり負債性を帯びたものである。国が将来に渡って国立銀行としてその銀行を管理するのであれば、その銀行は公社に順ずるものであり、当然経営陣は公務員に順ずるものとして財務省なりが人事権を持つべきである。ところがその様な様子は無い。ということは近い将来返済するまでの間の「かりそめ」の資本でしかないのではないか。

 もう一つは税効果会計による「水増し」部分である。
 金融機関は破綻の懸念がある債権については一定のルールに従い債権額の一定割合を引当金として計上しなければならない。破綻懸念の評価の問題は置くとして、企業会計上のルールとしては当然のことである。引当金として計上すればその分利益を圧縮することになる。ところが税法上は債権額の一定割合しか引当金計上できないので、企業会計上の利益と税法上の所得とに大きな差が生じる。それを有税処理という。そこで、会計上の引当金の計上と税法上の引当金の制限とによって生ずる法人税等の税金の差額を、「将来黒字経営になれば解消されるはずの税金部分」として繰延税金として資産の部に計上しているのである。その結果資産がその分膨らむため、資産−負債=資本という計算式で資本がその分膨らむことになる。
 これが税効果会計といわれ、一見すると当然のように思われるかもしれないがとんでもないことでもある。
 繰延税金とは、あくまでも「将来黒字経営となった場合に解消される」税金部分であって、赤字であれば解消されない部分である。そして何よりも、資金的な裏付けがないことである。確かに将来黒字になった場合には通常の税金を支払うわけであるがその税金を繰延税金から払うということであって、別に税金として企業から支出しなくてよいというものでは決してない。つまり数字のトリックなのである。

 従来企業会計では「保守主義の原則」により、「最小資産、最大負債」といわれて「不確実な資産は計上すべからず、債務の可能性のある負債は漏れなく計上せよ」との要請があった。このことは企業会計の堅実性を確保するための重要な原則とされてきた。
 ところが不確実な債権である破綻懸念先の債権に対する引当金を計上するのは当然としても、税効果会計というマジックによって「不確実」な資産を計上することを認めたのでは原則の意味が半減することになる。

 先日のテレビ報道によると都市銀行の自己資本比率はほぼ10%前後で横並びにならんでいるが、その自己資本の中身が、本来の自己資本といわれるものが20数%、公的資本注入部分が30%程度、そして税効果会計による増加部分が40数%となっている、とされている。
 もし公的資本を負債とし、さらに税効果会計をとらないとすれば、自己資本は現在の4分の1程度に減少するわけで、自己資本比率は国際基準から大きく割り込むことになる。
 と同時に税効果会計部分がもしなければ、資本の過半数を国の資本注入によっていることになり、明らかに国立銀行になるという問題も生じる。国立銀行となればその盛衰は財務省の責任となり、ひいては内閣の責任となる。その問題を回避したいがための「税効果会計」かと疑ってしまう。

 そして問題なのは金融監督庁の姿勢である。一方で地方銀行に対しては厳しすぎる検査で破綻にまで追い込んでいるかと思えば、他方で大銀行に対しては自己資本比率を数字のマジックで守ってやっていることである。

 金融監督庁が公の機関として国民の信頼に足る機関なのかどうかによって、金融不安の解消かそれとも不安の深まりを助長することになるのか、の分かれ道にあるといって差し支えない。今後の同庁の姿勢に監視の目を深めなくてはならない。



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