2003. 1. 28 藤島公平
前々から不思議に思っていた。中国が目覚しい経済成長を続けているにもかかわらず、円と元の交換レートは一向に変化しないことである。特に中国から日本への輸出は目覚しいものがある。それであれば輸出入の需給バランスから元と円の間に為替上の変動があってもよいものである。なぜなら現在では昔の中国とはまったく違っていて特別扱いすること事態が異常なのである。ところが変動しない。
その理由は中国では中央銀行が為替市場に介入して為替相場を維持する「管理フロート制」をとっていて実質上元はドルにペッグされているという。だから円とドルの変動程度の影響が元と円には起こりえてもわずかなものであって、ほとんど円と元の実勢相場を表していないという。
この円と元との相場の違いから日本の多くの企業は中国に資本進出し、今や日本は「加工貿易国」でなく、「輸入組立国」又は「輸入消費国」となってしまっている。それはもちろん中国の労働力の絶対的比較上の安さも手伝っているのは確かではあるが、単純に中国の労働力が安いだけでなく為替格差で表された賃金価格が日本よりも中国の方が安いことも大きく影響しているのである。
しかしあるマスコミデータによれば購買力平価で比較すると、円と元は現在の20:1とも15:1ともいわれる現状は、せいぜい4:1か5:1程度になるという。もしそうならば、中国は労働力の安さを最大の根拠として進出している日本企業にとって中国で生産しつづけることに意味があるかということになる。
中国で生産し、日本や欧米に輸出している分には大きな利益率をもたらす。しかし日本や欧米諸国の景気低迷の中で、中国国外への輸出が減り結果として中国国内で販売することが増えていくことが強まって来ると思われる。確かに中国市場は広く、奥行きは深い。従って利益は日本国内で生産し日本国内で販売するよりは大きな利益率をもたらすことは確かだろう。
しかし、その利益はあくまでも元で表示される利益であって、日本国内に円として還流する可能性は少ない。なぜなら元で如何に大きな利益を得てもそれを円に換算するには逆に為替格差の壁が立ちふさがるからである。であれば中国に進出した日本企業は利益として得た元を円に還流するよりも中国で再投資するか、もっと労働力価格の低いベトナムやラオスなどに投資するかとなる。しかし頻繁に資本移動することによるロスも考えられるので徐々にそのうまみを失っていく。
また最近は中国資本が日本など海外への投資意欲を強めているという。そうなると元の安さが障害となる。
私は中国がWTOにも加盟し、世界の資本主義経済に参加した以上は資本主義市場経済のルールに従うべきであると言いたい。「良いとこ取り」の保護主義的甘えはもういらないはずである。日本も日本経済の民族主義的なエゴでなく資本主義のルールとして中国に為替の変動相場への移行を強く促すべきである。
もし元が変動相場に移行して実勢価格に近づいたならば、日本企業が中国で生産し続けることの意味があるかという問題が起こる。社会資本の整備の状態、労働生産性の問題、政治環境の問題、法整備の問題など考えると果たして中国での生産と日本国内に回帰しての生産との比較が現実化してくると思われる。
社会資本にいたっては、例えば通信は携帯電話に代表されるように無線化しており中国でも一定の広がりは可能であるが、無線ではできない電力やガス、水、道路などのインフラの水準に大きく依存する部分での開発。法整備の未発達から生まれる経済トラブル、貧富の差の顕在化から起こる経済と政治的混乱などを考えると目ざとい日本の企業家はどのような判断を下すかは私には見えている。
いずれにしても、資本主義的な市場経済原理に参加する以上はそのルールの下で経済政策をすすめるべきである。それがいやなら元の「計画経済」に戻るべきである。しかしもう引き戻ることのできない状態にあるのが中国の現状である。日本政府は自国経済のことを考えるうえでも当然であるが、経済ルールを統一させるためにも中国だけに「良いとこ取り」の甘えを許すべきではない。グローバルスタンダートということばが空しく聞こえてくるだけである。