No69.会社のあり方を大幅に変える・・・「会社法」のポイント

                                   2005. 7. 6  藤島公平

 会社法が6月29日国会を通過しました。これは、今まで商法、有限会社法、商法特例法の各規定に分かれていたものをまとめ、再編成したものです。中小企業にもかかわりが深い法律です。来年(2006年)4月からの施行(予定)となります。
 日経新聞やネット上の記事を参考に会社法のポイントを整理しました。

主な変更ポイント

@有限会社と株式会社が統合

 来年4月以降は有限会社を設立することはできなくなり、すべて株式会社となります。既存の有限会社は会社法施行後は特別な手続き無しに「特例有限会社」という会社法の規定による株式会社として存続することになり、「有限会社の定款」は「株式会社の定款」と、「社員」は「株主」などと、それぞれみなされます。つまり、会社法施行後は、有限会社は、そのまま「会社法上のみなし株式会社」として存続できます。株式会社への変更も商号変更するだけで特例有限会社(会社法上のみなし株式会社)から普通の株式会社へ変更することになります。(但し、手続き的には株式会社の設立登記と特例有限会社の解散登記の同時申請が必要です。)

A最低資本金制度の撤廃

 現在は株式会社は1000万円、有限会社では300万円が最低資本金となっています。これからは、資本金を自由に設定できるようになります。
 ここで、問題となるのがいわゆる「1円起業」です。この特例会社は資本金1円から設立できますが、設立後5年以内に最低資本金〔1000万円〕を満たさなくてはならず、これを満たさないと解散か組織変更を迫られることとなっています。ところが最低資本金が今回の会社法の施行により撤廃されることになりますので、そのまま存続が可能です。しかし、特例会社は最低資本金に達しない場合解散する旨の定款の定めが置かれているので、定款変更決議だけは必要です。

B合同会社の創設

 「合同会社(LLC)」と呼ばれる制度が創設されます。独自の技術を持つ研究者が企業と組んで会社をつくる場合などに向いていて、起業の幅を広げると期待されています。株式会社と任意組合の利点を併せ持つことになります。株式会社と同様に出資者の責任を出資額の範囲内に限定できる一方、組合同様に利益や権限の配分を自由に設定できます。資金力が乏しい研究者が大企業と組んで起業する場合に、出資額が少なくても多くの利益配分を受けることなどが可能になります。この制度を使うことで、ベンチャーの起業や産学連携が進むと期待されています。

C債務の資本化や自己株式の処分の緩和

 会社法により債務を株式化・資本化することの使い勝手が増します。条件を満たせば債務の株式化が債権者と債務者の合意だけでできるようになり、役員借入などを資本に振りかえるなど財務改善の機動性が増します。
 また、自己株の処分も市場でのばら売りなどが一部認められるようになりました。いままでは、自社株を売り出す場合は新株発行と同じ形式でしかできませんでした。これからは市場で自社の株式を売却することを定款で明記すれば、市場でのばら売りができるようになります。

D現物出資の緩和

 今までの商法では、金銭に代えて債権・資産などを現物出資して株式を取得する場合は、原則として検査役による財産評価などの調査が必要でした。今後は弁済しなければならない価格が決まっている債権や簿価が明確な資産で、それによる出資額がその額を下回っている時は検査役の調査がいらなくなりました。「市場価格のある」有価証券を出資する場合も調査が不要になりました。

E配当など株主への利益還元制度の見直し

 配当については、株主総会の特別決議を経ることで現金以外を配当する現物配当が原則的に可能になりました。自社の商品などを配当の形で配分することができるようになります。
 会社が株主にお金を分配する手段は、現在では配当のほかにも自社株取得、法定準備金の減少に伴う払い戻しなどさまざまあります。従来はこれらの財源上の規制がそれぞれ異なっていましたが、会社法では多様な利益配分を「剰余金分配」として統一することになりました。分配可能利益が共通の一つの式で計算できるようになります。

F三角合併制度導入など組織再編の規制緩和

 今の商法では合併する際、吸収される企業の株主への合併の対価は存続する企業の株に限られています。会社法はこの合併対価の対象財産の規制を緩和し、存続会社の株だけでなく現金や債権、他社の株なども幅広く認めることになりました。合併対価として、存続する会社の親会社株を使うことを「三角合併」といいます。
 例えば外国企業が、日本にある子会社と日本企業を合併させ傘下に入れる際、外国親会社株を買収資金代わりに使えるようになります。
 ただし、三角合併による吸収合併には吸収する日本企業の取締役会の賛成がなければ合併契約が結べません。したがって三角合併は友好的な雰囲気での買収になるともいわれています。
 一方で会社法に盛り込まれた企業の合併・買収(M&A)促進策は「外資脅威論」のため、施行時期を二〇〇七年へと一年先送りすることにもなっています。

G株主代表訴訟の歯止め

 株主代表訴訟の規定では株主が訴える資格を持つのかという「原告適格」を見直しました。株主による訴訟権の乱用を懸念する産業界の要望もあり@株主が自己または第三者の不正な利益を図る、A会社に損害を与える、の目的で訴訟する場合は裁判所が訴えを却下できるようになります。総会屋が代表訴訟を利用して自らの利益を図る場合などが当てはまります。
 現行制度でも、裁判所が「嫌がらせ目的」と判断した場合に原告に担保の拠出を命じる「担保提供制度」がありますが、今回の見直しで、訴訟の乱発を防ぐ仕組みが拡充されることになります。
 ただ「会社に損害を与える目的」などの立証は難しく「提訴が大きく減り、役員側が楽になることはまずない」との声もあります。

H「類似商号の禁止」規定が廃止

 新会社法では、「類似商号の禁止」の規定が廃止されるので、施行後は同市町村内に同一の商号の会社を設立することができるようになります。
 「類似商号の禁止」の規定とは、同じ市町村において、他人が登記した商号を同種の営業について登記することを禁止するものです。紛らわしい商号を排斥して企業の同一性を担保することが目的ですが、規制の効力が同市町村内に限定され、規制の合理性が薄れているとの指摘や登記手続の簡素化の要請も踏まえ、この規制は廃止されることになります。
 今回の類似商号規制の廃止により、「会社の目的」について包括的な記載で登記できることになるので、調査事務の負担が軽減されることになります。
 ただし、新会社法では、今までと違い、既に登記されている他の会社と会社の目的が異なっていても、「同一住所」で「同一商号」での登記はできなくなるとされています。

I取締役の責任の見直し

 株式会社の取締役の解任決議は、有限会社と同様に株主総会決議に出席した株主の過半数で足りる「普通決議」に緩和することになりました。従来は三分の二以上の「特別決議」でした。要件を緩和することで株主総会が選・解任を通じて取締役をチェックしやすくなります。

J取締役会「持ち回り」決議も可能

 取締役会は、書面か電子メールなどの電子的記録を使った「持ち回り」決議が解禁されます。機動的な経営判断が必要との判断から「各取締役が同意し、業務監査権限を持つ監査役が特に意見がない時は書面決議できる」と定款に規定しておけます。
 ただし、会社の決算などの重要な決定が必要な取締役会は対象外で、一堂に会したこれまで通りの取蹄役会を開催する必要があります。

譲渡制限の会社の特例規定

 株主=経営者の多い日本の中小会社は、株式の分散を防ぐ目的で株式の譲渡制限がなされています。 そのような会社においては

K役員の人数規定の廃止

 譲渡制限会社では、取締役3名以上、監査役1名以上という規定がなくなり、取締役1名でもよくなりました。監査役もいなくてもよくなりました。

L取締役会の設置が任意になりました

 譲渡制限会社では、取締役複数の場合でも取締役会を設置しなくてもよくなります。(但し、取締役の過半数で決議の原則は変わりません)

M役員の任期が柔軟になります

 従来、会社役員の任期は、取締役二年、監査役四年〔設立一年目に限りいずれも一年〕でしたが、譲渡制限会社については定款で最長十年にすることができるようになりました。

既存会社でも変更可能

 既に株式会社を設立している場合であっても、定款変更を行うことにより、 取締役を二名以内とすることや、監査役をなくすことや役員の任期を十年以内に変更することが可能です。ただし、株式の譲渡制限会社であることが要件ですので、該当しない会社については、譲渡制限会社に定款変更することも必要です。

駆け込み設立が増える?

 来年四月以前に有限会社を設立しておけばほぼ自動的に株式会社になるため、登記費用を節約するため、駆け込み設立が増えることが予想されます。



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