相談内容 建設設計事務所を営んでおります。従業員は4人でうち一人は一般事務員で他の3人は全員株主かつ常勤役員です(いずれも全員1級建築士で設計監理業務についています)。
決算期末に算入しなければならない仕掛評価額を算出する場合、以下の点どのように考えるべきでしょうか?
@ 仕掛業務に関係した各役員の役員報酬の額は?
(仕掛物品別の作業時間×各人別役員報酬の時間単価)
A 仕掛業務に関係した各役員の旅費交通費、交際費等?
(現場調査のための出張費、および監理業務のために出張費および直接関連して支出された交際費等)
@、Aとも期末の仕掛評価額に算入すべきでしょうか?
なお、使用人兼務役員がいる場合には使用人部分の給与・賞与及び直接関連して支出された旅費交通費、交際費等は問題なく仕掛評価額に算入できると考えております。
以上の点よろしくお願いします。
回 答 ご相談の内容は設計業務の期末仕掛かり分についての原価計算、つまり工事でいうところの未完成工事支出金、又は仕掛原価の計算のことと理解しました。
ある工事なり業務なりについて、その原価を計算する場合の原則は、その工事なり業務の対象物に対して、物的及び人的な価値の移転が現実に行われたものについて計算することです。
@で問題になるのは、貴社の役員報酬が業務の対象物に現に移転したかどうか、つまりは業務量に比例する部分があるかどうかです。
通常は役員報酬というのは経営の維持管理に対する報酬とみられています。つまり役員と会社との委任契約に基づく報酬です。ですから年俸何億円ももらう役員がいても、その会社の経営状態からして無理がなければ、しかも株主総会の議決を得れば支給できます。その役員の業務量をもって評価するのではなく、会社の営業成績の向上に対する結果又は期待にたいする評価なのです。ですからその人の業務量と比例して決められないのが普通です。
しかし使用人兼役員、又はそれと同等の役員(社長など経営方針の重要な決定者といえども具体的業務にもたずさわっている場合がある)の場合は、もっぱら個別の業務に専属していることが多いので、その業務量に比例する部分が区分できるはずです。そしてその部分は原価計算上、仕掛かり部分に対しても評価し算入すべきでしょう。
ただし役員報酬の内、管理報酬部分と業務量比例部分をどのように区分するかはその役員の業務の実態や他の使用人の実態との比較のなかで決められることになります。つまるところ、その人が役員でなければ支払うであろう給与額がその人の業務比例部分額になります。
仕掛原価の計算方法は
仕掛業務別の作業時間×各人別役員報酬の内の業務比例部分の時間単価
です。
Aの問題は、旅費交通費や交際費に限らず、全ての費用について、その費用に関わるのが使用人か役員かに関係なく、個別業務の完成の為にそのことに基因して発生した費用はその業務の原価を構成しますので、当然に仕掛かりであれば仕掛原価として評価すべきです。
個別業務として特定できない費用でしかも全体の業務について支出された費用は共通費として、個別業務の原価に配賦されるべきものとなります。又、同じ様な費用でも会社の維持管理の為に支出された費用は一般管理費として処理できることになります。
さて、仕掛原価として計算するということは、費用の損金算入を次期以降に繰り延べることになりますので、決算の結果に大きく影響します。貴社の場合は大半が役員ということですので、この際各役員について業務比例部分と管理報酬部分との区分を明確にして、記録に残しておくことをお勧めします。今後の賃金考査の大事な記録にもなります。